日本デビューを果たしたLed appleを例に、韓国のバンドについて考えてみた。

日本の韓流ブームにおいて、”K-POP”の占める割合は大きいです。
K-POPというと思い浮かべるのは、歌って踊るK-POPアイドルグループじゃないでしょうか。ですが、歌って踊るグループだけがK-POPではありません。
韓国よりも日本の方が盛んなイメージがある”バンド”という形をとるグループもいます。CNBLUEやFTISLANDがそうですよね。
韓国ではバンドというもの自体がメジャーなものとして根付いておらず、世間では暗黙の了解で「アイドルバンド」 というアイドルのカテゴリに属していると思います。
先日、 Led appleというバンドグループが2013年7月31日発売のアルバムをもって日本デビューしました。
Led appleはもともと韓国で2010年にデビューしたロックバンドです。彼らは他のアイドルグループなんかと比べると知名度の高いグループとはまだまだ言えないかもしれませんが、そのライブパフォーマンスの高さに定評があり、一定のコアファン層を獲得しています。
70-80年代を彷彿させる感性溢れるメロディー、メインボーカルのハスキーだけど奇麗に伸びる声が魅力的で、曲は聞けば聞く程中毒性のある感じ。
そして好評を得ているライブパフォーマンス。
ヴォーカルの2人がパフォーマンス中に振り付けを披露することから、<踊るロックバンド>と称されることもあります。
▼MV


▼ こちらが先日の日本デビュー曲のMVです

決してダンス・ロックバンドがもの珍しいというわけではないのですが、そもそもバンド自体が日本よりもメジャーではない韓国のバンドグループで且つ<踊るバンド>というのは珍しいのではないでしょうか?
そこで彼らを勝手にポジショニング分析してみました。
マーケティングを考える時、性能とかデザインと同等、もしくはそれら以上に、“どのカテゴリのどこにポジショニングするか”、というのはとても重要な視点です。
ダイソンの「羽のない扇風機」とかはまさによい事例ですよね。見方によっては扇風機というよりも変わったデザインの「高機能送風機」といった方がしっくりくる気もするのですが、その製品を「扇風機」というカテゴリの中で、「羽がない」というユニークな位置にポジショニングすることで話題を集め、ヒット商品化することが出来ました。
日本のバンドでも、「リーゼントに学ラン姿で演奏するバンド」や「楽器を弾かないビジュアル系エアーバンド」といったユニークなポジションで一躍有名になったグループがいますよね。
ただ、ポジショニング戦略を考えるときに重要なのがユニークなだけだと意味がありません。そもそもきちんとニーズを満たすものでなければ、それはただの変わった製品でそれが話題にすらならないなんてことも・・・。
日本の「リーゼントに学ラン姿で演奏するバンド」や「楽器を弾かないビジュアル系エアーバンド」は、ただユニークなだけでなく、彼らは自分たちが面白いと思うことをとにかく徹底的に追求し、他のバンドがやらないようなことも積極的にパフォーマンスに取り入れています。ダンスあり。アクションあり。コントあり。
見ている人たちは、音楽を聞いて楽しむだけでなく、彼らのパフォーマンスを見て楽しむことが出来るし、カラオケや忘年会等で真似して楽しむことも出来ました。
Led appleの場合。
彼らは<韓国産の踊るロックバンド>という意味でユニークな位置にポジショニングをしているといえるでしょう。
これがニーズを満たすものであるかについてですが・・・
まず韓国では、「バンド」というカテゴリではなく「アイドルバンド」という意味で「アイドル」の中に暗黙にカテゴライズされている点で既に難しさがあります。
最近のアイドル戦国時代において、事務所のバックアップを受けてデビューするいわゆる「アイドルグループ」たちと比べると<踊るロックバンド>というのはポジション的にこれ以上人気を広げるのがちょっと厳しいのが現実。
このカテゴリに属しながら、さらに人気と知名度をあげるのであれば、例えばゴールデンボンバーくらいに振り切るとか(笑)、冗談ですけど、それくらいの思い切りが必要なのではないかと思います。(あくまで「例えば」の話です。CRAYON POPの例からも見られる通り日本の流行は韓国にも受け入れられる傾向にあると思いますし。)
しかし、彼らがアイドルバンドの域を超えたバンドとしての成功を目指すのであれば。
まずはアイドルではない「バンド」というカテゴリの認知度を韓国でもっとメジャーなものにしていく必要があるでしょう。
そういった意味で韓国の「バンド」というのはそもそもポジショニング以前のカテゴリ的な難しさがあるのだと思います。
それに対して、日本においては、そもそも「バンド」というものがメジャーなカテゴリとして既に確率しています。K-POPというとアイドルイメージが先行してしまいますが、全ての「アイドルバンド」が暗黙の了解で「アイドル」にカテゴライズされることはないのではないでしょうか。そういう意味で、むしろ日本では「アイドルバンド」をおしたポジショニングをした方が有利になるのでは。
「韓国産」「踊る」「アイドル」バンド。音楽を聞いて楽しめ、パフォーマンスを見て楽しめ、そしてアイドルとしても楽しめる。
今回の日本デビューにあたり、楽しい振り付けと楽しいパフォーマンスを売りにしているようなので、強いて言うなら振り付けにもっとインパクトがあったり、真似して盛り上がれるようなものだと人気に火をつけるきっかけになるかもしれませんね。
韓国でも日本でも、これからの活躍に期待です。
Kyuyon Kim