2018トラベリング・コリアン・アーツ

ワン・インスピレーション~韓国の伝統文化から見つけた最初のアイデア開催



駐日韓国文化院では、韓国国際文化交流振興院が行う優秀な展覧会を海外に紹介する「トラベリング・コリアン・アーツ」事業の一環として、韓国のサビーナ美術館の主管、駐日韓国文化院とシロタ画廊の共催により「ワン・インスピレーション~韓国の伝統文化から見つけた最初のアイデア~」展を下記の通り開催する運びとなった。

民族の過去と現在、未来を繋ぐ懸け橋の役割をする「伝統文化」は芸術家たちに無限なインスピレーションを与える「アイデアの源泉」になる。

本展覧会は韓国と海外で活発に活動している8名の韓国作家が韓国固有の伝統文化資源から最初のアイデアを見つけ、独創的な作品を作り出す創作過程を明らかにする試みであると同時にその結果だ。ハングル、韓紙、十長生、トッケビなど半万年の韓国の歴史の中で継承してきた有・無形文化遺産の紹介と共に、現代技法、媒体などを通じて再創造された作品を一堂に集め、披露し、韓国と同じ東アジア文化圏に属する日本での展示を通じて両国の伝統文化の独創性と類似性を探ってみる深い文化交流の場を設ける。

尚、この度は、本展覧会を共催する東京銀座のシロタ画廊においても、同じ8名の作家の新作を発表し、約二週間に渡り作品を展示する予定。

 

 

【展示概要&情報】

展示名:2018トラベリング・コリアン・アーツ

「ワン・インスピレーション~韓国の伝統文化から見つけた最初のアイデア~」

入場無料

・会期:駐日韓国文化院-2018831日㊎~919日㊋10:00~17:00

シロタ画廊-2018年9月3日㊊~9月15日㊏11:00~19:00

※休館日:日曜日(9/2, 9/9, 9/16)、祝日(9/17㊊)

オープニングセレモニー:駐日韓国文化院-2018831日㊎17:00

            シロタ画廊201893日㊊17:00

・アクセス:駐日韓国文化院-地下鉄東京メトロ「四谷三丁目」駅 徒歩3分

シロタ画廊-地下鉄東京メトロ「銀座」駅 徒歩5分

・出品作家及び展示作品:韓国の伝統文化・技法によりインスピレーションを

得て、現代社会的な雰囲気を反映し、表現された韓国現代作家8人の作品

26点の展示(うち10点をシロタ画廊で展示)

■主催:韓国国際文化交流振興院(KOFICE) ■主管:サビーナ美術館(韓国)

■共催:駐日韓国大使館 韓国文化院、シロタ画廊 ■後援:文化体育観光部(韓国)

お問い合わせ:河(ハ)、朴(パク) 03-3357-5970  postmaster@koreanculture.jp

 

【参加作家及び作品の紹介】

①カン・ウン(Kang Un):韓紙

カン・ウンは生と死の循環である人生史を、消滅と誕生を繰り返す自然現象になぞらえて表現する作家である。1990年代から「雲」をテーマに油絵を描いてきた彼は、この10年、一千年以上の歴史を持つ韓国伝統紙である韓紙を用いた作品を発表している。連作「空気と雲」では、染めた韓紙をキャンバスに貼り、その上に韓紙の切れ端を重ねていきながら雲を形づくる。小さく薄い韓紙を切り抜いて貼りつづける作業は、まるで修行と祈りの過程のようなものであり、日常の苦悩を取り払い、自然を取り込もうとする作家の意図がうかがえる。

 

②キム・ソンボク(Kim Sung Bok):トッケビ(妖怪)・ヘテ(海駝)・龍

キム・ソンボクは、韓国の伝説や神話に出てくるトッケビ(妖怪)、ヘテ(海駝)、龍などからインスピレーションを得たユニークな彫刻を手がける。彼の作品は人間の祈願と結びついており、像の呪術的な力を信じ期待をこめて像を作り上げる行為と相通ずるものがある。韓国の民俗信仰においてトッケビは、人間の物質的な欲求や祈願を満たしてくれる身近な存在であり、トッケビの持つ棒は富をもたらす幸運の印である。トッケビの棒とさじが結合した「夢さじ」(2018)、5歳から80歳の老人にいたるさまざまな人々の実際の夢を彫刻した「トッケビの夢」(2018)には、希望のない時代に生きる現代人に夢と希望を抱いてほしいと願う作家の想いがこめられている。

 

③キム・スンヨン(Kim Seung Young):半跏思惟像・自己省察

キム・スンヨンは、水、石、苔といった自然物やサウンド、光などを媒体にしたインスタレーション作品を通じて、自己省察と芸術による癒しという実践的試みを行うことで、他者に安らぎをもたらす作品世界を築いてきた。今回紹介される「悲しみ」(2016)は、韓国の古代仏教彫刻史の研究の出発点であり、6-7世紀東アジアの代表的な仏教彫刻品でもある国宝83号「半跏思惟像」をモチーフにしている。仏陀の象徴である解脱の微笑みは、悲しみと苦悩に満ちた顔となり、右手は涙をぬぐおうとしているような姿勢に変わり、人生の重みを背負った一人の人間として再解釈されている。解脱と超越の存在である仏陀も、我々のように悲しみ、苦痛や挫折感を感じるのだという作家のメッセージを通じて、人間の感情について省察する機会を得ることになるであろう。

 

④キム・チャンギョム(Kim Chang Kyum):水臼、民画(牡丹図、花蝶図)、朝鮮時代の器(石榴文、印花文)

イメージと実在、再現について絶えず疑問を投げかけるキム・チャンギョムは、ビデオインスタレーションと合成写真を用いて人工化した現実を描く。ヴァーチャルオブジェの上に投射された仮想の映像は実際と虚構の境界を崩しながら我々の持つイメージと関連した先入観をゆるがす。本展示では、韓国の四季の自然風景をおさめた映像を韓国固有の石物「ムルハク」に映し出した<Water shadow four seasons>を発表する。観覧客はヴァーチャルな自然世界でリアリティーの混乱を経験するとともに新たな感覚の広がりを感じることだろう。

 

⑤ナム・キョンミン(Nam Kyungmin):画家の部屋、文房(朝鮮時代の士人の部屋)

連作「画家の部屋」で知られるナム・ギョンミンは、アトリエの風景自体が作家自身を映し出す鏡だと考え、膨大な文献や資料研究をもとに大家たちのアイデンティティーや作家本人の独創性を同時に表現してきた作家である。今回の展示では朝鮮時代の美術の大家として知られる鄭敾(チョン·ソン)や申潤福(シン·ユンボク)の画房の中に見られる、彼らの代表作品、美術材料、古家具、文房四友などと共にナム·ギョンミン作家自身を隠喩する象徴物などが混在した超現実的な空間に出合える。

 

⑥ヤン・デウォン(Yang Dae Won):ハングル

社会に対する「疑心」、「中毒」といった反抗的な姿勢で自らのアイデンティティーを表現してきたヤン・テウォンは、個人を超えて国家や社会、人類が経験している歴史的な問題にまで関心を広げてきた。今回の展示で紹介される連作「文字図」は、あらゆる不幸は言葉から始まるという作家の内面的な省察から始まった。ハングルの原理と造型性を探り、子音と母音の形から固有の抽象美を発見し、その形状をさまざまに組み合わせて表現した作品を観ることができる。

 

⑦ユ・ヒョンミ(Yoo Hyunmi):十長生(日・月・山・水・石・松・亀・鶴・鹿・不老草)

ユ・ヒョンミは作品の背景となる空間をつくり、自ら彫ったオブジェたちを配置してから色付けを行って絵画的な質感を生かし、写真や映像を撮影する独創的な作品世界を築いてきた。こうしたさまざまな媒体による過程が積み重なった作品は、現実と仮想の世界、写真と絵画、平面と立体の間を行き来しながら、認識の混沌を引き起こす。今回の展示では韓国の自然物崇拝思想、神仙思想、道教に基づく不老長生を願う「十長生」をモチーフにした作品が紹介される。十長生の十の象徴物(日・月・山・水・石・松・亀・鶴・鹿・不老草)は、ユ・ヒョンミならではの造型言語として新たに誕生し、現実と非現実の空間を行き来する境界で観覧客の好奇心や想像力を刺激するだろう。

 

⑧イ・ギルレ(LEE Gilrae):松

イ・ギルレは十長生の象徴物の中の一つで、真っ直ぐな気概、強固な意志を象徴する「松」をモチーフにした彫刻を発表する。松は韓国の木と呼ばれるほど朝鮮民族の文化と密接な関係があり、芸術分野に深いインスピレーションを与え、文学、名画にさまざまな形で登場してきた。銅パイプを一定の間隔で切って作った数百、数千個の楕円形の輪をつなぎ完成させた、彼の松の彫刻作品は、自然界の生成原理である凝集と生命性を具現している。

 

【トラベリング・コリアン・アーツについて】

「トラベリング・コリアン・アーツ」は韓国国際文化交流振興院が、毎年展示と公演を交互に韓国文化芸術に対する海外の高い関心と需要を反映するプログラムを提供するために企画された事業です。韓国文化交流の拠点である海外の韓国文化院を中心に多様な文化芸術プログラムの普及を通じて、韓国文化芸術の海外での波及力を高めることを目的としています。
【サビーナ美術館について】

サビーナ美術館は非営利に運営される韓国の私立美術館で、1996年3月、ソウル鍾路区仁寺洞に位置した企画専門サビーナギャラリーから始まり、2002年ソウル鍾路区安国洞に移転し、美術館として開館しました。開館22周年を迎えたサビーナ美術館は、美術品コレクターのデータを保有するレリーズリストとアートロンの美術市場モニターが共同調査を行った「私立美術館報告書」に世界の主な都市の中、韓国の首都・ソウルにおいて、見どころのある現代美術館の3か所の中の一つとして選定されました。

主な展示としては、「美術と数学の交感1-2005年」、「2050 Future Scope:芸術家と科学者の未来実験室-2009年」、「ソーシャル・ネットワーク・アート:芸術、疎通方式の変化-2012年」、「アーティスト・ポートフォリオ-2013年」などがあります。2014年、3Dプリンティング時代の幕開けと共に企画展「3D Printing&Art」、2016年初め、短編コンテンツの時代を展示で示した「60sec Art」と2017年セルピの流行を捉えた「#Selfie_私を撮る人々」に至り、時代の流れや トレンドを現代美術に繰り出す展示と、他分野との融合複合型の展示を開いています。また、創造性を重視した多様な教育プログラムを運営しており、2018年8月にソウル市恩平区ジングァンドンに新築移転を予定しています。「ワン・インスピレーション」展では、展示の総括企画を担当しました。

 

 

【シロタ画廊について】

シロタ画廊は1966年に日本の美術特化街の東京銀座に設立され、版画を中心に日本国内、海外の近代・現代美術を取扱っています。新人育成にも力を注いでいて、1970年代のモノ派が始まる時期、李禹煥(リ・ウーファン)画伯を含め、関根伸夫、菅木志雄など当時若い作家たちが芸術について語れる展示の場を提供しました。また、このような縁により、李禹煥(リ・ウーファン)画伯の初期作品を所蔵し、1998年には版画集を出版し、現在まで最新の作品を紹介しています。尚、毎年の版画公募展を通じ、若い作家をサポートしていて、日本のみならず海外の有望作家養成にも励んでいます。

「ワン・インスピレーション」展では、参加する8人の作家を日本のコレクター及び美術関係者に紹介するため、新作発表の場を設けました。