こんにちは。Fukuiです。Kコミックの話続けます。

韓国では最近、ライトノベル(以下、ラノベ)の人気が高まっており、その中のひとつ「私と虎様」がコミック化されたことが大きな話題になっています。

日本ではラノベを原作としたコミックのヒット作はたくさんあります。「スレイヤーズ」とか、「とある魔術~」とか、「涼宮ハルヒ~」等々・・・。それに比べ、韓国のラノベはそんなに大きな市場ではなく、読者も日本の作品のハングル版を読んでいました。しかし最近は、韓国人作家の作品も充実してきて、一定のファン層を獲得してきました。「私と虎様」は、その代表作と言えましょう。


この「私と虎様」、キャッチフレーズは「21世紀の檀君神話ラブコメディ」と謳っています。

檀君神話とは何か? 13世紀に編纂された朝鮮半島の三国時代の歴史書「三国遺事」に収録されている建国神話で、人間になりたい熊と虎の話です。暗い洞窟のなかで100日間、生活しながら、ヨモギとニンニクだけを食べるという戒めを守った熊は人間になれましたが、虎は洞窟での生活に耐えられず外に飛び出してしまい、人間になれなかったという内容です。根気強かった熊より、耐えられなかった虎の方が人間的なような気もしますが。神話の真偽のほどは別として、韓国人は、虎が身近な存在で好きな動物です。韓国サッカー代表チームのシンボルは虎だったりします。


「私と虎様」では、虎の化身の女の子が主人公の男の子を惑わすというストーリーで、

現在版の檀君神話ということらしいです。内容は「三角関係ラブコメ」で、「うる星やつら」のラムちゃんが虎様の化身になった感じです。舞台設定からすると、「犬夜叉」にも似てるかも・・・。作者は、高橋留美子のファンかもしれませんね。


このラノベが、韓国のオタク男子の間で絶大な人気を誇り、すでに10巻近くが発行され、通算で10万部を超えました。韓国という小さなラノベ市場では大ヒットと言われています。

「私と虎様」のコミカライズ作品は、Kartooncupというスマホ用の週刊漫画アプリにて連載が開始されました。Kartooncupは、毎週1200ウォン(約110円)で12作品の連載をスマホで読むという新しいスタイルの配信サービスです。


Kartooncupはカカオトークと連携しており、良い作品には、「いいね」を押したり、作家とのトークルームがあったり、単なる漫画を読むだけでなく、友達とシェアする漫画誌の構造がとても好評で、開始2週間で5万人の登録を記録しています。

韓国はウェブトーン市場が拡大し人気を集めていますが、作家は、ポータルサイトでの無料配布型のウェブトーンに対する抵抗感がないわけではなく、特にトップクラスの漫画家は、自分の作品をキチンと買って読んでもらいたいという願望が強くなりました。そこに目を付けたのがKartooncupで、トップクラスの韓国漫画家だけを集めて有料で配信するアプリの提案をして賛同を得ました。このサービスが発表されるやいなや、「なんでこんな豪華な作家を集めることができたのか?」という驚きの声がたくさん上がりました。「黒神」の朴晟佑や、「らぶきょん」の朴ソヒ、TRACEのNASTY CATなど、日本でもよく知られた作品の作家たちが連載しています。


しかし、いざ創刊してみると、ダントツで人気ランキング1位になったのは、「私と虎様」でした。ラノベとしての人気はあるものの、コミックを手掛けたのは、ユンジェホさんというさほど有名な作家ではなく、編集部としても創刊前はあまり期待していませんでした。

コミック版「私と虎様」は、「作品>作家」という公式を裏づけました。有名作家であっても、新作をヒットさせるのは、そんなに簡単ではないということです。

最近の漫画雑誌の傾向として、週刊ジャンプのような特別な雑誌でない限り、ひとつの雑誌に1つのダントツな人気作品が生まれます。コミックビームの「テルマエ・ロマエ」、別冊少年マガジンの「進撃の巨人」、月刊ヒーローズの「ULTRAMAN」等です。

KARTOONCUPの当面の成否は、どうやら「私と虎様」が担うことになると思われます。

本当は、これだけ豪華な作家陣が連載しているので、もう少し色んな人に読んでほしいという編集部の希望もあるのかもしれませんが、雑誌はある特定の作品に読者層が集中して、その雑誌の方向性を定めて行ってしまいます。

今回は、漫画誌ってむずかしくて、もどかしいもの、ということを言いたかったんです。

では、また。

@Hwaiting_Newsさんをフォロー