このドラマを一言で表すとすれば、それは「母性愛と献身愛」である。このドラマ、表面だけを見ると、代理母という重いテーマを軸にして、ドロドロの展開が繰り広げられるかのように見えてしまう。実際にドロドロである。しかしその根底には、「愛情」を軸にしたドラマという裏の顔が隠されている。

 

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『千万回愛してます』というドラマのタイトル通り、本作品には登場人物たちの愛情がそこかしこに散りばめられている。それは、家族愛や夫婦愛、兄弟姉妹の愛など様々だ。特に、主人公の献身的で、かつ情熱的な愛情には、観ていて心が洗われる。この主人公の「命がけの愛」があるからこそ、冒頭で語ったヒロインの母性愛が、強く活きている。

 

本作品において、主人公とヒロインの恋愛模様は、他の韓国ドラマに負けず劣らずの試練の連続である。一体なぜ、これほどまでに苦しむ必要があるのかを、視聴者は真面目に考えさせられるだろう。こんなにも愛し合っている2人が、結ばれないことに、胸が締め付けられてしまう。

 

2人の試練の入り口には、冒頭で示した代理母という軸が存在する。目の前の信じがたい事実から、何度も目を背けながらも、その重いテーマを見事に克服してみせた2人の根底には、常に「母性愛と献身愛」がある。主人公の命がけの愛が、絶望感に満ちたヒロインの心を、何度も激しく突き動かしている。

 

対照的に、2人を取り巻く登場人物たちの、支配欲や嫉妬心、恐怖心、劣等感や優越感、コンプレックスなど、愛情とはかけ離れた、自己への執着心が物語をより際立たせている。これらの登場人物たちも、最終的には「ヒロインの母性愛」と、「主人公の献身的な愛」によって、「最初のカタチ」に戻っていく。そうして、ライフスタイルを変えていく登場人物たちの姿が、本当の幸せのカタチとは何かを視聴者に訴えかけている。

 

このように、「愛情」という裏テーマが根底に流れているからこそ、ドロドロな展開に疲れを感じても、最後まで視聴意欲がかきたたせられてしまうのだ。

 

さて、このドラマには、「物事は考え方次第」という「学び」がある。代理母という行為そのものは、世間一般的に、なぜか蔑まされたりすることが多いようだ。そんな行為そのものを、主人公は「切実に望んでいた人に、贈り物をした」と解釈し、許し受け入れてみせる。ここには、自分の主観は、いつでも変えることが出来るという、脚本家の強いメッセージが込められているようだ。

 

また、本作品は『私の心が聞こえる?』というドラマと共通した終わり方を迎える。それは、「心がぽかぽかする」という点。前述のとおり、表面上では非常にドロドロしているため、ダラダラ感や登場人物たちの、激しい自己への執着心に、心まで疲れてくるときも少なくはない。そのような展開が最後まで続くため、どのような結末を迎えるのだろうかと、本気でハラハラさせられてしまう。しかしながら、そんな心配を、見事に裏切ってくれる。この作品を、最後まで観た視聴者は、心が温かくなり、涙が止まらないだろう。まさに、これまでのイライラを、すべて吹き飛ばしてくれ、「本当に良かったね」という気持ちにさせられるのだ。この不思議な現象があるからこそ、韓国ドラマはやっぱりやめられない。

 

『私の心が聞こえる?』も、本作品に通じる終わり方を迎える。デジャビュではないが、そのような感覚に陥ってしまう。こうなってくると、これまでの展開が、すべて「最終回のために必要であったもの」という解釈に転換する。そして本作品が、その終わり方のみに、強く印象付けられてしまう。全くもって、不思議な現象である。やはり、最終回は大事であると再認識させられる。

 

最後に、登場人物たちの心に残る名ゼリフをご紹介させて頂く。



「福作り。福を作れば作るほど、福が戻ってくる。」(チ・オクソン)



解説:とあるきっかけで、ガンホ(主人公)が拾ったウンニム(ヒロイン)の財布。その財布を返す機会に恵まれず、捨てようとしたガンホに、「いつか会えるであろう、その人に返しなさい。捨ててはいけない。」と祖母オクソンが話した言葉。捨てずに持っていれば、いつか持ち主の役に立つ時が、必ず訪れるという意味が込められている。



「天が誰に味方するか誰にも分からない。天に任せて黙ってなさい」(パク・エラン)



解説:代理母として、子供を産んでくれたウンニムに感謝するどころか、あってはならない、天罰が下ると話すソニョン(不妊の妻)。それに対して、そんな性根では、あなたこそ天罰が下るよと、ウンニムの継母エランが話したセリフ。事実に抗って、人を操作しようとすることは、人のためではなく己の欲のために過ぎないこと。黙って、静観して見守ることこそが大切であるという意味が込められている。



『千万回愛してます』本当に面白い韓国ドラマである。

(文=平松相善)


次回予告

ドラマレビューシリーズその4  『優しい男』