この作品を一言で表すのならば、「何も考えずに笑って泣けるドラマ」という言葉が一番しっくり来るかも知れません。多くの韓国ドラマには悪役が登場しますが、その度合いが激しすぎて心まで疲れてしまう時があります。そこに笑える要素でも含まれていれば、多少は癒やされるのですが、それもなかったりすると最後まで見る熱意が失せてしまうことも少なくありません。しかしながら、このドラマにはそれがありません。一話に一度は、必ずどこかでお腹を抱えて笑えるシーンや、感動のあまり涙が止まらなかったりするシーンが登場するため、「安心して視聴できる」のです。そして、それは作品に対する大きな信頼感へと繋がっていくのです。

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ポニーキャニオン 公式Youtubeチャンネルより

 

 

このドラマの大きな特徴として最初に挙げられるのが、「非日常的な要素がないのにヒットしたドラマ」という点です。この作品には、記憶喪失や出生の秘密や交通事故、遺伝子検査など、韓国ドラマでは定番の現実離れした要素がほとんど登場しません。そういった設定でも、視聴率45%を超える国民的ドラマとなりえたことは、過激な要素がないとヒットを生み出せないというこれまでの概念を見事に覆しました。同時に、非日常的な設定でなくとも、十分に視聴者を楽しませることが出来るということを教えてくれたのです。

 

もう一つの特徴として、「埋もれた俳優女優たちの発掘と再発見」というところにあります。若手からベテランまで、これまであまり知られていなかった俳優女優を多数起用し、人気のある俳優女優たちと共演させることで、見事なまでの化学反応を作り上げています。そして、この作品をきっかけとしてブレイクした名俳優の多くは、その後も様々な作品で活躍しているのです。

 

例えばオ・ヨンソ。彼女はこの作品のオーディションで、審査員にこんな言葉を話したそうです。「この役は絶対に私しか出来ないから使って下さい」。とてもチャレンジ精神溢れる言葉ですよね。2002年にデビューし、これまで日の目を見ることなく女優活動を続けてきた彼女自身にとっても、このオーディションでは特別な思いや覚悟があったのかも知れません。この言葉を信じた製作者側は、本作品を通じて見事に彼女の才能を開花させることに成功しました。劇中でのキム・ナムジュとのケンカのシーンなどは、まさにオーディションでの言葉通り、彼女にしか出来ない体当たりの演技で、このドラマを大いに盛り上げ、高い演技力が評価されました。そして翌年には、主演を演じた『私はチャン・ボリ!』が最高視聴率35%を超え大ヒット。その年の演技大賞では最優秀女優賞にまで輝きました。

他にも、チョ・ユニやユ・ジュンサン、シム・イヨン、チン・ギョン、ナ・ヨンヒなど、この作品を大きなきっかけとしてブレイクした俳優女優は数知れません。このように、「埋もれた名俳優たちを見事に発掘」しただけでなく、それらの俳優女優と、人気のある演者のコラボレーションが絶妙にマッチしたことで、今までに見たことのない「現代のホームドラマ」が生み出されたのです。

 

そして、忘れてはならないのが脚本です。本作品には、パロディシーンやカメオ出演が史上最多といわれるほど多く登場しています。劇中でも「ごめん、愛してる」や「シークレット・ガーデン」の名場面などが登場し、パロディ元の作品を見た人にとっては思わずニヤニヤさせられてしまうのです。いわゆるゲスト出演と言われるカメオ出演も、チ・ジニ、チャ・テヒョン、コン・ヒョジン、キム・ソヒョン、シン・セギョン、イ・ジェヨン、ZE:A、イ・ジョンシン(CNBLUE)など、そうそうたる顔ぶれです。よくこれだけの人を呼ぶことが出来たなと思うぐらい、豪華さに満ち溢れています。

 

また、ユン・ヨジョン、ヤン・ヒギョン、チャン・ヨン。この辺りは役柄も含め、『がんばれクムスン』を見た人にとっては、たまらないキャスティングとなっています。

 

こういったパロディやコメディ要素をふんだんに取り入れながらも、しっかりと感動的なエピソードも入れる脚本のバランスが何とも絶妙なのです。本作品の脚本家である、パク・チウンは、まだ30代の若い女性。本作品では、「姑ワールド」という造語が生み出されるほど、家族という大きな題材をテーマに現代の嫁姑の風景がコミカルに描かれているのですが、その模様は見ていて疲れるどころか、思わず笑いが止まらなくなるほどの演出です。これはもはや、パク・チウンマジックなのかもしれません。そして、それは同じく脚本を担当した『星から来たあなた』や『プロデューサー』に繋がっていくのです。

 

 

最後に、あくまでも私の独断と偏見で選んだ劇中での登場人物たちの心に残る名ゼリフをご紹介させて頂きます。

「1000年生きても別れは来る」(チャ・ユニの父)

解説:余命3ヶ月を告げられたヒロインの父が、泣きじゃくるヒロインに対して言った言葉です。人は1000年も生きられない。1000年生きたとしても、別れの時は訪れる。それは100年でも3ヶ月でも変わらない。誰もが味わう別れの時が少し早いか遅いだけ。残り3ヶ月一生懸命愛し合おうという意味が込められています。

 

「裕福じゃないけど貧乏じゃない。お金のせいで争うことが一番貧しいこと」(コ・オク)

解説:経済的に貧しく、大黒柱として家計を支えてあげられず、裕福な暮らしをさせてあげられないことを申し訳なく思っている旦那さんに対して、奥さんが言った言葉です。たとえ、お金で買えるものは持っていなくても家族がいる。それだけで十分に幸せだということを教えてくれます。

 

『棚ぼたのあなた』本当に面白い韓国ドラマです。

 

【次回予告】韓国ドラマレビューシリーズ その2 |【いとしのソヨン】